建設業許可は建設業を営む上で必ず必要というわけではない
一言で建設業と呼んでも工事内容も様々であれば、工事規模も様々です。
我々が子供時代の勝手なイメージで建設業を語るなら、地元の大工さん、街の電気屋さん、水道屋さん、畳屋さん、ガラス屋さんと言ったところでしょうか。
最近では請負形態なども変わってきているようですから、寂しいことではありますが、地元の大工さん(工務店)なども昔ほど身近ではなくなってきているようにも感じます。
我々が今回、イメージしたような地元密着で地域に根付いた工事屋さんというのは工事自体の請負単価がそこまで大きくなかったりします。
この場合、建設業者でありながらも建設業許可を受けなければ商売ができないというわけではありません。
これは建設業許可を求められる一定の条件に満たないためなのですが、時代も変わり、様々な場面において建設業許可を求められたりしているようです。
建設業を営む皆様が今後、建設業許可を受けるべきか否かの判断材料となるよう、法令内、法令外の観点を踏まえて見ていきましょう。
法令上、建設業許可を取得しなければ工事を請負えないケース
- 請負工事の額が500万円以上(建築工事業は1500万円以上)となる場合
- 経営事項審査を受ける場合
実は法令上、建設業許可を受けなくてはならない場合というのは、上記の2点だけです。
これのいずれかに該当する場合には、すぐにでも許可を受けてください。
もっとも、ここで掲げているのは建設業許可を受けなくてはならない場合ですので、これらに該当しない場合においても建設業許可の要件に合致すれば許可を受けることは勿論できますし、事前に許可を受けておくことも問題ありません。
請負工事の額が500万円以上(建築工事業は1500万円以上)となる場合
建設工事を請負う際の請負契約の金額が500万円を超える工事は、建設業許可を受けていない業者において請負うことはできません。
この500万円には消費税はもちろんのこと、材料費なども含まれるとされています。
現状、500万円には到底満たないような金額の工事を請負っておられる会社さんにおいても、いつこのような工事が飛び込んでくるかはわかりませんから、500万円という数値をしっかりと覚えておいて損はないでしょう。
尚、許可業種の中で建築工事業のみ請負金額が1500万円以上の場合に許可が必要とされています。
つまりは建築工事業に該当する工事においては1500万円未満の請負内容であれば、建設業許可を受けずとも請負うことが可能です。
更に建築工事業においては、請負金額に関係なく許可を不要としているケースがあります。
建築工事業で延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅は許可自体が不要
建築工事業において一般住宅の建設工事を請負う際、その建築物が木造建築であり且つ延べ面積が150平方メートル未満であれば、許可は不要とされております。
この条件に該当する請負工事では、請負額が1500万円を超える場合でも許可を受けている必要はありません。
但し、この条件はあくまでも住宅に限った話。
店舗や事務所などの住宅以外の建築工事を請負う場合には、この条件に該当しませんので注意しましょう。
また、一番間違えが多いものとして併用住宅があります。
店舗併用住宅などが該当しますが、この場合、延べ面積の2分の1以上が住宅であればこの条件に該当します。
美容室や飲食店などとの併用住宅で時折、店舗部分の方が大きい建物があるようですが、この場合には制限にかかりますから注意しましょう。
経営事項審査を受ける場合
こちらの要件はこれから新たに建設業許可を受けようかと迷われている方にとってはまだ縁遠い内容かもしれません。
ただ、新たな工事への参加の際などに経営事項審査を受けてくれと言われたなんてケースであれば、必要となってくる内容です。
このページは許可の必要可否に関することを記述していますから、経営事項審査そのものの説明については割愛しますが、簡単に言えば、会社の経営状況等を数値化して対外的に見やすくする手続きです。
会社に点数が付きますから、公共工事などを請負う際にはこの点数を基に受注ができるかできないかが決まったりします。
公共工事を請負う会社には絶対的に必要となるものなのですが、通常の民間工事を中心に請け負っている会社にとってはあまり馴染まない内容かもしれません。
前置きが長くなりましたが、この経営事項審査という手続きを踏むためには、建設業許可を受けていなくてはななりません。
理由は簡単で制度上、そのようにされているからです。
公共工事を元請として請負う会社においては、通常、経営事項審査の受審が求められますので、必然的に建設業許可業者ということになります。
法令外で建設業許可を求められるケース(良くある事例)
法令上、建設業許可を求められるのは前述の2点だけです。
しかしながら、絶対に必要というケースに該当をしない場合でも、許可を取って欲しいと言ったご依頼を毎年、多くいただきます。
良くある理由としていくつか挙げてみたいと思います。
- 元請より建設業許可を取らないと発注しないと言われた
- 複数の都道府県に跨って解体工事を行っている現場がある
- 法人成りのタイミングに合わせて許可を取りたい
- 銀行融資を受けるためには建設業許可が必要
元請より建設業許可を取らないと発注しないと言われた
我々が建設業許可取得のお手伝いをさせていただく中で、この事由に該当し許可の取得を急がれているケースは極めて増えました。
今までは何も言わずに発注をしてくれていた会社から急に建設業許可を取ってくれと言われ、その発注期限が迫っているなんてケースです。
土木公共工事などの下請として工事に参画して来た会社さんに対して元請業者より下請業者にも建設業許可の取得を徹底する旨の通知が来たなんてものや、大手ハウスメーカーの下請として内装工事や建具工事など専門工事を施工して来た業者さんが同様に建設業許可を持っていない会社への発注は中止すると言われたなどというのが多いでしょうか。
昨今はコンプライアンスに非常に厳しくなりました。
会社が大きくなればなるほど、コンプライアンスには神経質にならなくてはなりません。
こういった世の流れから元請企業にしてみれば自社だけではなく工事を請負う協力会社に関しての管理(リスクヘッジ)も始めた表れであると思います。
非常に良い風潮ではありますが下請業者さんにとってはそんな急に言われてもとなるようです。
これから建設業者として運営されていく方々にとっては、いつ許可が必要となるかわかりませんから、将来に備えての書類の管理等は徹底されることをお勧めします。
ちなみに余談ですが、今はまだ建設業許可は取れないけれども将来を見据えて今から書類などの管理を徹底しておきたいという業者さんに関しては、将来、確実に許可を受けるためのコンサルティングも承っております。
お気軽にお問い合わせください。
複数の都道府県に跨って解体工事を行っている現場がある
既に解体工事業を営まれている方はご存知かと思いますが、建物などを解体し更地に戻すなどの工事を請負う場合には、請負金額の大小に関わらず解体工事業者登録という手続きを踏まなくてはなりません。
この手続きは解体工事現場を管轄する都道府県に対し申請し、登録を受けるものです。
つまりは47都道府県の全てにおいて解体工事を行う可能性がある場合には、その全てに登録をしなくてはなりません。
これでは手間も管理も維持するための費用も馬鹿になりません。そこで、建設業許可の取得が検討されます。
建設業許可は営業所を構える場所にて許可を受ければその効力は全国に有効ですから複数の都道府県で許可を受ける必要はありません。
これに加えて建設業許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれか)を受けている場合には解体工事業者登録はしなくて良いとされておりますから、許可を受ける要件さえ満たせるのであればすぐにでも許可に切り替えた方がメリットが大きいというもの。
これ故に解体工事業者さんからの建設業許可取得依頼が多いのです。
法人成りのタイミングに合わせて許可を取りたい
長く個人事業として運営されて来た方が法人成りをされるのと同時に建設業許可を受けたいと仰られるケースもとても多いです。
法人成りという節目に併せて建設業者としての体制を整えたいと思われるのでしょう。
こういった場合、建設業者としての実績は十二分なことが多いので、許可を受けるための要件は大抵満たせているように思います。
法人成りをすると社会保険への加入が義務になったりと色々とコンプライアンスを求められるようになりますから、建設業許可を受けるには非常に良いタイミングなのかもしれません。
銀行融資を受けるためには建設業許可が必要
ここ数年、この理由からの建設業許可取得も非常に増えています。
結局はこれについても金融機関サイドから見たコンプライアンスの確認なのだろうと思います。
もっとも、銀行からの融資を理由に許可取得のご依頼をいただくケースでは500万円以上の工事が目の前にある場合が多いです。
工事を請負うための資金として融資申請をしていることも少なくありませんから当然と言えば当然です。
建設業許可は知事許可の場合で申請をしてから約1ヶ月の審査を経て許可書(許可通知書)が発行されますが、融資案件の場合だと許可が出たのを待っていては間に合わず、銀行から直接、申請書の控えをくださいなんてことも良くあります。
今後、銀行からの融資を頻繁に活用し事業規模を拡大したいと考えている経営者さんにとっては建設業許可の取得も検討しなくてはならないのかもしれません。